ブランパン・バチスカーフ5100 1140 O52Aはフィフティファゾムスの製品の中でもケース径が38㎜というミニマルなサイズ感ですが、ダイバーズウォッチとしての醍醐味が損なわれない時計造りも特徴です。各ブランドのダウンサイジングもあって、ここ数年注目されています。ひと月程体験したこのモデルのレビューを紹介します。

モダン・ダイバーズウォッチの祖!

1735年創業のブランパンがフィフティファゾムスを発表したのは1953年。このモデルが生まれたきっかけは2人のフランス海軍士官がさまざまな時計ブランドへ足を運び、彼らのミッションに耐えうる防水時計を探したからとされます。

https://www.blancpain.com/en/brand/our-vision/history

当時彼らの要求を満たす防水時計は皆無、そこで既知の潜水用具会社を通じてブランパンCEOジャン-ジャック・フィスターと出会った事から、新製品(フィフティファゾムス)を開発するに事へ至ります。

有名なロレックス社のサブマリーナーが発表された1954年の前年にフィフティファゾムスはフランス海軍特殊部隊用の潜水時計として発表されたのです。これが世界初のモダン・ダイバーズウォッチと言われる由縁になります。

フィフティファゾムスが発表された3年後の1956年に一回り小さいモデルとしてバチスカーフはリリースされ、当初からベゼルが金属製(おそらくアルミ製)で針もバータイプでした。

高級機の雰囲気を持つスポーツウォッチ

バチスカーフを一言で言えば、高級機の雰囲気を持つダイバーウォッチです。ちょっと乱暴な言い方をすると、「筋肉バカでは無い」スポーツウォッチとも言えます。

300M防水のダイバーズウォッチでも、厚みが約1.1㎜(10.8㎜)と極薄、なおかつ100時間のロングパワーリザーブを備えていることが特徴です。38㎜のケース径で重量も約70g前後と軽く、従来のダイバーズウォッチとは全く異なります。

高級機らしい気品さを感じる点はやはり文字盤の仕上げの良さとムーブメントに起因します。文字盤はブルーのサンレイ仕上げ、海をイメージさせる深い青は光の加減で青または黒に変化し、さながら深い海の海面のようです。

そこへ太陽光が注ぐと放射状に筋線が伸びて、文字盤にこれまでとは違う雰囲気の輝きを見せてくれます。サファイア風防はドーム型で光の乱反射も少なく、太陽光の下でも時間がハッキリと読み取れます。

文字盤と同系色のストラップは、デザイン性に優れてシティーユースでも違和感なく使える装いです。従来のダイバーズウォッチはモノトーン色モデルが多いのが特徴でした。

近年は各社陸上で使う事が常識化し、ブランパンでも従来のカラーの他に、ホワイトやグリーン・ダイヤルのモデルまで出ています。これらはフォーマルなドレスシーンや仲間内のパーティーでも問題無く使えるでしょう。

シティーユースとスポーツどちらでも使える

バチスカーフはフィフティファゾムスの弟モデル的な印象を持っている人もいるかもしれません。

現行品はフィフティファゾムスペンシル針リーフ針アラビア数字、バチスカーフはローソク針バーインデックスで統一、フィフティファゾムスはサファイアクリスタル製ベゼルに対して、バチスカーフはセラミックベゼルというように明確な区分がされています。

専門誌は前者をヘリテージ、後者であるバチスカーフはより初代モデルをスポーティーに解釈したとされています。僕もそれには同感で、弟モデルより、シティーユースに特化したダイバーズウォッチという印象です。

現に真っ先に感じたことが「軽いダイバーズ!」という事でした。これまで使った事のあるダイバーズウォッチや試着した物と比較すると明らかに軽量で、異次元のダイバーズです。

軽量ゆえ長時間装着しても腕の疲労感は殆ど感じません。もしかすると、プロユースのダイバーウォッチは浮力のある水中使用を想定しているため、ある程度重量感ある製品に特化しているのかもしれません。

しかし現代のダイバーズウォッチの主戦場は陸上(おか)です。そう考えると軽量かつスタイリッシュでカジュアルな装いのダイバーズの方が使い勝手が良いと思います。その上でダイバーズウォッチが持つ特性を活かした時計造りをするべきでしょう。

ダイバーズウォッチはその特性からもスポーティーなシーンこそ最適です。例えば軽いダイバーズウォッチだとランニングにも使えます。元々水に強いので汗も問題無く、あまり知られていませんが振動にも強い構造です。

また逆回転ベゼルは簡易ストップウォッチとしても使えるので、幅広いスポーツ・シーンへ応用できます。スポーツ後はそのままシャワーを浴びる事もでき、ロッカーでの盗難の不安も全くありません。

ダイバーズウォッチとは思えない薄型ムーブメント

キャリバー1150ムーブメントは、フレデリック・ピゲ社のキャリバー1150をベースにした信頼性の高いムーブメントです。デザイン(設計)は開発時のままにゼンマイにシリコンを採用して耐磁性をアップしています。

このムーブメントの最大の特徴は3.25㎜の薄さでも100時間のパワーリザーブを持つ事です。実際同社のドレスウォッチ、ヴィレルにも登載できるほどの薄い仕上げになります。

使っていて感じる事はローターの巻き上げの良さと「カチカチ」という音が殆どないことです。ムーブメントは平面に置き少し傾けるだけで、ローターがクルリと回転しゼンマイを巻き上げます。この軽やかさは衝撃的でした。

「カチカチ」音が少ないのはおそらく部品同士のエネルギー効率が良いからなのでしょう。つまり部品を磨き上げて摩擦を軽減し、熟練の職人が神業的な組み立てを施していると推測できます。

210個の部品数もダイバーズウォッチ・ムーブメントとしては異色です。近年のスポーツウォッチは耐久性向上のため、殆どのメーカーで部品数は100個前後迄に抑えています。それにも関わらず倍近い部品数を使用することはひとえに精度の探求と考えられます。

実際このバチスカーフは手元に来て以来一度も「時刻合わせ」をしていません。クロノメーター認定の私物ティソ・バラードですら、1週間に一度は時刻合わせをしていました。数秒のズレが許せない人以外は一ヶ月に一度程度の時刻合わせで十分だと僕は思います。

ムーブメントの基本設計はしっかりしており、長い年月をかけて熟成したワインのような仕上がりです。ノウハウも蓄積され信頼性が、極めて高いことは間違いありません。

意外に知られていませんが、バチスカーフにはハック機能(秒針停止機能)がありません。秒単位でしっかりと時刻合わせしたい人には不向きな時計ですが、前述したように高精度なので、ハック機能は必要ないかもしれませんね。

バチスカーフのライバルとなるモデルとの違いは?

価格的には2022年2月時点で、ロレックス社サブマリーナーがノン・デイトモデルで99万(税込)デイト付で111万円なので、このバチスカーフ(全機種デイト付)の販売価格103万円と大きな差はありません。

両者の最も大きな違いはパワーリザーブの差です。バチスカーフはこの5100-1140が100時間となっておりサブマリーナーと、30時間以上の差があります。

もう一つ挙げるとするなら、ケース厚みの差です。

一般的に機械式時計は薄い時計ほど高級と言われます。設計の観点で見ても厚みとパワーリザーブの長さは比例するものです。サブマリーナより薄く(約2㎜以上の差)パワーリザーブは30時間長いと、相反する事実。

バチスカーフはそれだけ優れた設計(デザイン)のもと、造られた時計であることを(薄くてパワリザが長い事)時計のスペックが証明していると僕は考えています。

あくまでも個人的意見ですが、サブマリーナーより僕はバチスカーフの方が好みです。軽くてダイバーズウォッチの基本性能を兼ね備えたバチスカーフを腕時計ビギナーの人たちもぜひ体験してください。